1.日本語で似ている意味の言葉の正しい使い分け│食べ物編

→あ~か →さ~た →な~は →ま~や →ら~わ
日本語は世界の言語と比べても驚くほど語彙数が多いのが特徴です。多彩な表現ができる一方で似たような意味の言葉もたくさんあり、迷うケースも少なくありません。

ここでは食べ物に関する勘違いしやすく、間違えやすい日本語を紹介します。

あ~か行
アイスクリームVSソフトクリーム
「アイスクリーム」と「ソフトクリーム」。この違いは食べてみれば明らかだろう。 アイスクリームと名づけられているものは、ある程度堅さがあるのに対し、ソフトクリームはその名のとおり、とてもソフト。アイスクリームほど固まっていない柔らかい状態のものだ。 どちらも主原料は牛乳で、砂糖や香料(バニラなど)卵黄などを加えて作られたものであることに違いはない。ただし、アイスクリームは、製品としては密封してあり、固く冷凍化されていること、乳固形分が15%以上あることが食品衛生法で決められている。 これに対し、ソフトクリームは、ソフトな状態でかつ密封していないものをいう。


アサツキVSワケギ
「ワケギ」と「アサツキ」は、どちらもユリ科の多年草で、一見よく似ているが、違いは大きい。 ワケギは長年、ねぎの一種と考えられてきたが、じつはねぎと玉ねぎの種間雑種とわかっている。球根が20~30に枝分かれして増えるところから「分葱」と呼ばれるようになった。日本ではおもに関西以西で作られている。 もう一方のアサツキは、ねぎの中で最も細く、ワケギに比べて辛味があるので、薬味に用いられる。ワケギも薬味として用いられるが、よりピリッとした辛味が欲しい人にはアサツキがおすすめだ。


アスパラガスVSホワイトアスパラガス
生鮮野菜の「アスパラガス」は緑色だが、缶詰の「ホワイトアスパラガス」は白い色をしている。これは品種が違うからだろうと思うところだが、じつはこの二つは同じ品種。アスパラガスは、土を押しのけて地面から突き出してくるが、この芽は日光を当てて栽培すれば、光合成をするために緑色になる。 だが、芽が出る前に土を25センチほど盛り上げておくと、芽は土の中だけで育つことになる。すると日光が当たらないために黄白色になるのだ。 つまり、アスパラガスが緑色か白いかは、育てるときに日光を当てたか当てなかったかによる違いなのだ。こうして育った緑色のアスパラガスとホワイトアスパラガスは、色だけでなく栄養分にも違いが出てくる。緑色のアスパラガスのほうが、ビタミンAとB2が豊富だ。


イーストVSイーストフード
パン作りには欠かせない「イースト」。日本名で「パン酵母」と呼ばれているもので、自然界にある果実や穀類(じゃがいも・米・小麦など)からパン作りにもっとも適した菌を純粋培養したものである。イースト菌を使えば、は短時間でふっくらとでき上がる。 このイースト菌の働きを助けてくれるのが「イーストフード」だ。イースト菌が自然界のものから培養されたものであるのに対し、イーストフードは塩化アンモニウムや硫酸カルシウム、リン酸カルシウムといった添加物に、小麦粉やデンプンなどを混ぜて製剤化されたもの。つまりイーストフードは、イーストの栄養源となる食品添加物である。 このイーストフードを製造過程に使うことによって、パンは機械による製造でもふっくらと膨らむし、短時間に大量生産が可能になった。イーストフードを使わないと、パサパサしたパンに仕上がる可能性もあるようだ。


人造イクラVS天然イクラ
天然イクラは、いうまでもなくサケ・マスの卵だが、人造イクラは、天然色素で着色したサラダ油や海藻エキスなどでできている。 天然イクラか人造イクラかを判断するには、いくつか方法があるから試してみよう。小鉢に盛られたしょうゆ漬けなら、箸でかき回してみるといい。人造ならすぐに目玉のような部分が上を向くはずだ。 また、食べてみて皮に堅さを感じるものも、人造イクラの場合が多い。


糸こんにゃくVSしらたき
すき焼きに欠かせない「しらたき」。同じこんにゃくの仲間に「糸こんにゃく」と呼ばれるものもあるが、その違いはどこにあるのか?とくに関西ではしらたきを糸こんにゃくと呼ぶこともあるので、両者はとてもややこしい。 一般に、しらたきは、色が白くてとても細いのに対し、糸こんにゃくは、しらたきよりやや太く、色も着色されている。 原料はどちらもこんにゃくいもだが、しらたきは細くしてから固めるのに対し、糸こんにゃくは固めてから細くする。そのためしらたきほど細く仕上げることができないのだ。 色が違うのは、原料に混ぜてあるものが違うため。しらたきの原料はこんにゃくいもだけだが、糸こんにゃくにはお茶や海藻、きくらげなどが混ぜられているので、色が黒っぽくなるのである。 現代では、しらたきも糸こんにゃくも日本全国で発売されているが、そもそもしらたきは東日本系で、糸こんにゃくは西日本系。そのため、西日本ではしらたきのことを糸こんにゃくと呼んでいる場所もある。


カレーうどんVSカレー南蛮うどん
おそば屋さんなどのメニューに載っている「カレーうどん」。でもよく見ると、店によっては「カレー南蛮うどん」と書かれていることもある。普通のカレーうどんに比べて、カレー南蛮うどんには、何か特別なものでも入っているのだろうか?じつは、カレーうどんという場合は、玉ねぎが使われていることが多いのに 比べ、カレー南蛮うどんはねぎが使われていることが多い。つまり、「南蛮」とはねぎやとうがらしを用いた料理につける名称のことである。 古代中国ではインドシナなど南洋諸国のことを野蛮な地域とみなし、南蛮と呼んでいた。日本でも中国の影響を受けて、これらの国々を南蛮と呼び、その国を経由してやってくる外国人を南蛮人と呼んだ。その南蛮人がねぎを好んで食べたことから、ねぎのことを「南蛮」と呼ぶようになったのだ。


うなぎVSあなご
「うなぎ」と「あなご」。魚屋の店先に並んでいたとして、これがうなぎなのかあなごなのか、はっきりと見分けられる人は、さほどいないだろう。 うなぎとあなごは、おなじ「ウナギ目」に属しており、うなぎは「ウナギ目ウナギ科」、あなどは「ウナギ目アナゴ科」と呼ばれる。魚の中では兄弟のようなものだ。どちらも体が細長くてひも状をしており、腹ビレはない。ウツボやウミヘビやハモなども同じ「ウナギ目」である。 ただ、うなぎには、あなごをはじめとする他のウナギ目の魚とは、決定的に違う点がある。 あなごなどが海で生まれ海で育ち、最後まで海で暮らすのに対し、うなぎは稚魚の段階で海から離れ、川や湖といった淡水にやってきて、親になるとまた海へと帰っていくのである。 見た目の違いは、うなぎが下あごが出るのに対し、あなごは上あごが出ている。目はうなぎは小さく、あなごは大きい。また、うなぎの尾びれの先端は丸いが、あなごは尖っており、あなごの体には、頭部と体側に白点が並んでいる。 栄養面では、全体的にうなぎに軍配が上がる。うなぎの脂肪の含有量は、あなごの約2倍。ただ、ビタミンAの含有量は、うなぎには及ばないまでも、あなごは他の魚の17倍近くも多いから、うなぎには及ばないまでも、あなごは栄養面で優れた食材であるといえる。


エクレアVSシュークリーム
「シュークリーム」と「エクレア」は、違いがあるというより、エクレアがシュークリームの変形、あるいは発展形と捉えるのがよさそうだ。 シュークリームとは、小麦粉やバター、牛乳を使った生地をオープンで焼き上げ、まるくふくれた皮の中の空洞にクリームを詰めたものである。シュークリームの名は焼いた皮の形がキャベツに似ていたところからきており、シュー (フランス語でキャベツのこと)・ア・ラ・クレームというのが正式な名前。英語ではクリーム・パフというのが一般的である。 エクレアは、このシュー生地をキャベツのように丸くせず、細長く焼いてクリームを挟み、皮の上に溶かしたチョコレートをかけて固まらせたもの。 フランス語で稲妻を意味するエクレアの名前の由来は、諸説あっておもしろい。 もっとも一般的な説は、焼いたシュー皮の表面に入ったヒビが、稲妻の閃光のように見えるからというもの。ほかに、クリームが飛び出さないよう稲妻のようにすばやく食べるからとか、皮にコーティングしたチョコが光に反射するのが稲妻のように見えるから、などという説もある。


生食用カキVS加熱調理用カキ
市販されているカキには、「生食用」か「加熱調理用」の表示がされている。 生食用はナマでも加熱しても食べられるが、加熱調理用は加熱せずに食べないほうがよいことになっている。 しかしこれらは、鮮度や味で区別されているわけではない。 食品衛生法で定められた「生食用カキの規格基準」をすべて満たしたカキが「生食用カキ」なのだ。 この基準を満たすためには、まず、産業廃水や生活廃水の少ない清浄な海域として指定された場所で養殖されたカキでなければならない。 さらに、そのカキを、ナマで食べても安全なように、塩水でよく洗わなくてはならない。 一般的には生食用カキのほうがおいしいといわれるが、加熱調理用カキが生食用カキよりまずいというわけではない。 むしろ、生食用カキほど何度も洗浄しないので、旨味が逃げておらずにおいしい場合もある。


カフェオレVSカフェラテ
コーヒーにミルクがたっぷり入ったものを、「カフェオレ」という。ところが最近、「カフェラテ」という名のミルクたっぷりのコーヒーが登場し、コーヒーショップなどで人気を博している。ともにミルクたっぷりのコーヒーであることに変わりはないのに、この違いは一体何なのか? じつは両者の違いは、簡単にいうと出身国の違いである。カフェオレはフランス語で、カフェラテはイタリア語だ。 フランス出身のカフェオレは、フレンチローストの豆で淹れたコーヒーをベースにミルクをたっぷり注いだもの。 それに比べてイタリア出身のカフェラテは、ベースになるコーヒーがエスプレッソ。イタリアでコーヒーといえばエスプレッソを指すのが一般的である。エスプレッソは、深煎りした豆で淹れたコーヒーで、味は普通のコーヒーよりかなり苦みが強い。このエスプレッソにミルクを注いで作られているのがカフェラテというわけだ。 ちなみに、カプチーノと呼ばれるコーヒーもイタリア出身で、エスプレッソをベースにしたアレンジコーヒーのひとつ。こちらはエスプレッソにミルク、さらに泡立てたミルクを加えたものである。ミルクの量は、カフェラテよりやや少ない。つまり、コーヒーの苦みが強く出ている順にいえば、カプチーノ、カフェラテ、カフェオレということになる。


キャベツVS芽キャベツ
スープやシチューなどに用いる「芽キャベツ」。あんなに小さいのに形は「キャベツ」そっくりで、まるでキャベツのミニチュアである。芽キャベツというからには、やはりキャベツの芽なのか? そう思うところだが、じつはキャベツの芽が芽キャベツというわけではない。 芽キャベツはキャベツの栽培変種で、葉の付け根のえき芽が結球する品種なのである。 普通のキャベツと違って、芽キャベツは一株の茎に50~60個も芽がびっしり付く。味はキャベツよりも甘く、とくに12~2月の芽キャベツは甘味が増し、柔らかくておいしい。栄養も、普通のキャベツと芽キャベツとでは違いがある。芽キャベツは、カリウムがキャベツの3倍ほどもあるし、ビタミンCもキャベツの3倍以上と栄養も豊富だ。 これに対してキャベツは、ビタミンCやカリウムの量で芽キャベツに負けているかわり、ビタミンUが豊富である。


吟醸酒本VS醸造酒
日本酒のラベルを見ると、「本醸造酒」「吟醸酒」などと品質表示がされているのがわかる。 日本酒をつくるときには、まず原料となる米粒のタンパク質や脂肪質を削って精米する。精米によって残った白米の割合(精米歩合)や、蒸した米を麹で発酵させる方法によって、日本酒の品質が変わってくるのである。 精米歩合70%以下で、普通の発酵方法で醸造した酒(純米酒)に25%未満の醸造用アルコールを添加した酒が、「本醸造酒」だ。醸造用アルコールが25%以上なら「普通酒」、まったく無添加なら「純米酒」となる。 「吟醸酒」はこれらの酒より高級で、精米歩合は60%以下と低く、長期低温発酵させてつくる。長期低温発酵は時間がかかるが、そのぶん酵母から独特の醸造香が生まれて、フルーティな香りがつくのである。


クッキーVSサブレVSビスケット
スーパーの菓子売場では、さまざまな「クッキー」「サブレ」「ビスケット」が売られている。 この三つはどれも、小麦粉をベースに、糖分とバターなどの油脂類、卵や乳製品を加えて焼いたお菓子を指している。じつは、ほとんど同じようなお菓子を、イギリスでは「ビスケット」、アメリカでは「クッキー」、フランスでは「サブレ」と呼んでおり、それぞれが日本に入ってきて併用されるようになったのだ。 とはいえ、日本では、三者がまったく同じというわけでもなく、呼び分けされている。 糖分と脂肪分の合計が40%以上で、手作り風の外見だと「クッキー」や「サブレ」と呼ばれ、それ以外は「ビスケット」と呼ばれるのが一般的だ。


グラ二ュー糖VS上白糖
台所に常備して料理に使う砂糖は、袋に「上白糖」と表示されているが、コーヒーや紅茶に入れるサラサラしたものは「グラ二ュー糖」である。 じつは、上白糖もグラニュー糖も、原料や精製工程は同じだ。ただ、最終段階の結晶の純度によって砂糖の種類が違ってくる。 砂糖を精製するには、サトウキビを煮込んで濾過した液を濃縮し、結晶を取り出すが、このとき最初に抽出する純度の高い結晶が「グラニュー糖」だ。グラニュー糖の純度は99.8%で、ほぼ100%に近い。 このグラニュー糖に、ぶどう糖と果糖を同量ずつ合わせた転化糖という糖を加えると、粒子が小さくしっとりした感じになり、甘味も少し強くなる。これが「上白糖」である。 また、グラニュー糖をすりつぶせば、よくヨーグルトに添付されている「粉砂糖」になり、固めれば「角砂糖」になる。


さ~た行
ジャムVSプリザーブ
フルーツを砂糖で煮詰めて保存性を高め、パンやケーキ作りに使うものを「ジャム」と呼んでいるが、この中に「プリザーブ」タイプとして売られているものがある。 ジャムは英語でjamと綴るが、その語源は、「グチャグチャ噛む」という意味のchamに由来するといわれる。chamは押しつぶす・詰め込むといった動詞でもある。 果実のもとの状態がわからないほど煮詰められたのがジャムなら、もとの形がいくらかわかる状態で完成としたのがプリザーブ。プリザーブは、普通にジャムを作るときより砂糖が少なめだ。原料となる果実の25~30%の砂糖を使うことが多く、煮詰める時間も短い。水分の少ない果実の場合は、少量の水を加えることさえある。 そのため保存性はジャムに比べて劣るが、果実本来の香りや歯ざわりが残り、フレッシュ感が強い。 ジャムは、プリザーブよりも砂糖が多く、市販のものはとろみを出すためにペクチンが加えられている。 市販品のためのJAS規格では、ジャムを「ゼリー化するまで加熱したもの」としており、プリザーブは「原料果実の大きさまたは原型を保っているもの」としている。


薄口しょうゆVS濃口しょうゆ
濃口しょうゆとは、大豆と小麦をほぼ同量使い、十分に発酵・熟成させた本醸造のしょうゆだ。日本のしょうゆ消費量のじつに80%を占めている。濃厚な旨味と香りがあり、つけ、かけ、煮物料理など全般に使用されている。 薄口しょうゆは、兵庫県竜野地方で始まった関西生まれのしょうゆ。色が薄くて、香りも弱いため、卓上用には不向きだが、素材の色を生かしたい料理や、素材そのものの旨味を引き出す料理にはピッタリだ。 すまし汁なども薄口しょうゆのほうができ上がりがきれいだし、香りが強すぎないためにおいしく仕上がる。原料は濃口しょうゆとほぼ同じだが、色を薄く仕上げるために塩分を多くしてある。 両者の塩分を100g中で比較してみると、濃口しょうゆが約15gなのに対し、薄口しょうゆは16g。色は薄いけれど、じつは濃口しょうゆよりも薄口しょうゆのほうがしょっぱいのである。


天然食物繊維VS人工食物繊維
食生活の変化により日本人にも増加傾向にある大腸ガンの防止、女性の便秘解消に役立つといわれているのが食物繊維。 ごく普通にバランスのよい食生活を送っていれば十分に足りるものなのだが、この食物繊維がダイエットにいいと人工のものが開発されている。胃の中で水分を吸って膨張し、満腹感が得られるからだ。 しかし、科学的に作り出された食物繊維には、ガン予防効果までは期待できないという。せいぜい便秘解消に役立つ程度である。


スダチVSカボス
「スダチ」と「カボス」は、どちらもユズから偶発的に生まれた近い親戚どうしである。そのため、形がよく似ている。 「スダチ」は徳島県生まれだが、「カボス」は外国生まれで、来歴がはっきりわかっていない。ただ、300年ほど前に中国から大分に伝わったといわれている。 名前の由来を見るとどちらも酢として用いられたことがわかる。「スダチ」は「酢橘」から転じた名称で、「カボス」は漢字で書けば「香母酢」だ。ただし、カボスについては、乾燥させた皮を用いて「蚊燻し」にしたのが語源という説もある。 共通点の多い「スダチ」と「カボス」だが、どちらかといえばカボスのほうが大きくて皮が厚い。加えて、スダチとカボスには、それぞれに独特の味と香りがある。


スパークリングワインVSシャンパン
パーティでよく登場する発泡性のワインといえば、「シャンパン」があまりにも有名だ。似たものに「スパークリングワイン」というものもあるが、これらは別のものだろうか? 結論からいえば、シャンパンはスパークリングワインの一種。スパークリングワインとは、ワイン中に炭酸ガスが溶け込んだ状態で瓶詰、密閉されたものをいう。開栓したときに炭酸ガスが解放され発泡するもの、つまり発泡性のワインの総称が「スパークリングワイン」だ。 シャンパンは、スパークリングワインの中でも、フランス北部のシャンパーニュ地方でつくられるものに限られる。中でもシャンパン法という独特の方法で製造、貯蔵した発泡性ワインのみがシャンパンと名乗ることを許されているのだ。 フランスのシャンパーニュ地方以外でつくられたスパークリングワイン「ヴァン・ムスー」と呼ばれ、イタリアのものは「スプマンテ」、ドイツは「ゼクト」、スペインのものは「カバ」と呼ばれている。


酢VSポン酢
「酢」は酒を発酵させて作るところから、酒のあるところには必ず生まれた。 日本の酢は日本酒から作られる米酢が主流だが、フランスならワインから作られるワインビネガー、ドイツやアイルランドなどビール消費国として知られた土地にはモルトビネガーといった独自の酢が誕生した。 しかし、酒が発酵してできる酢のほかに、自然界には天然の酢が存在する。 相橘類の搾り汁だ。日本では、ダイダイ、ユズ、スダチ、カボスなどが、鍋料理の名脇役となり、焼き魚にそのまま搾りかけたり、搾り汁で酢の物が作られたりしてきた。 海外でも、鴨肉のソテーオレンジソースのように果実の搾り汁がソースなどに使われてきたが、このオレンジなどの柑橘類の搾り汁のことをオランダ語でポンスという。 日本人がオランダ人からこのポンスという言葉を聞いたとき、「すっぱい」ところから酢を連想し、「ポン酢」と当て字にしてしまったのが「ポン酢」の始まりだ。ところが、日本料理では酢にしょうゆを混ぜて使うことが多かったため、柑橘類の搾り汁そのものだけでなく、この二杯酢のことまでをポン酢というようになってしまったのだ。


ぜんざいVSおしるこ
「ぜんざい」と「おしるこ」。この二つは、関東と関西では認識がかなり違う。 関東では小豆あんの汁物すべてが「おしるこ」であり、あえて区別するなら、粒なしが「御前しるこ」、粒ありが「田舎しるこ」、そして汁なしで餅などにあんこが添えられているものが「ぜんざい」だ。 これに対し、関西では粒なしが「おしるこ」で、粒ありが「ぜんざい」、汁がなければ「亀山」となる。 愛知県と富山県を結ぶラインあたりで、おしるこ派とぜんざい派に分かれているようだが、土地によっては「ぜんざい」などという言葉すら存在しない場所もある。 そもそもぜんざいの語源は、釈迦が弟子のよい行いに対して「善哉善哉」と褒めた仏教語。後に、一休禅師がこの食べ物を食べて「善哉」と褒めたことから「ぜんざい」と呼ばれるようになったといわれる。


ソーセージVSハム
「ハム」はもともと西洋で保存食として考案された。豚肉をかたまりのまま、硝石を混ぜた塩に漬けてから燻煙し、煮沸してから冷やしたものが「ハム」である。本来ハムとはブタのもも肉で作られたものだが、日本ではロースハムやショルダーハムなど、違う部位で作ったものも多い。 一方の「ソーセージ」は、豚肉に限らず、牛肉や羊肉、ときには馬肉などを混ぜて練り合わされ、ブタやウシの腸に詰められたもの。あとの工程はハムと同じで、燻煙、煮沸、冷却の過程を経て市場へ出荷されている。 ペースト状の肉をケーシングするという技術をそのまま、獣肉でなく魚肉に応用したのが、日本独自の魚肉ソーセージだ。

新鮮な卵VS古い卵
冷蔵庫の棚にしまってある卵のうち、前に買ったものが残っていたはずだが、はてどれだろう? こんなとき、割ってみて黄身がこんもり盛り上がっているほうが、新しいということは誰にでもわかる。 でも割る前に確かめて使う卵を決めたいなら、殻をよく眺めてみよう。キメ細かく、光沢があってなめらかなものが新鮮さの卵だ。 かつてはツルツルした殻は日数を経たものといわれたが、最近は洗卵して出荷されるのでこの見分け方はあまり参考にならない。


卵VS玉子
たまごには、なぜか表記の方法が二通りある。卵と王子。 どのように使い分ければいいのだろう。 鶏のたまごは「卵」で、料理のたまご焼きは「玉子」。つまり、生物学的な意味でのたまごが「卵」であり、食材としてのたまごが「王子」と表記されることが多い。 卵とは一般に、孵化して育つことが前提なので、オスとメスがかけあわされたことによって誕生した有精卵を指す。それに比べ、主に食材として出回っている玉子は無精卵。どんなに温めても、ヒヨコになることはない。 最近ではスーパーなどでも時折有精卵が食用として販売されている。無精卵に比べて栄養的に優れているかのように感じる人も多いだろうが、栄養成分分析によれば、ほとんど差はないようだ


チャーハンVSピラフ
ともに具が交じったご飯である「ピラフ」と「チャーハン」。これらは似ているようでも、やはり別ものだ。 ピラフはトルコ料理に由来するのに対し、チャーハンは中国語、ご存じのとおり炒飯と書く中華料理である。したがって、当然作り方も異なる。 本来のピラフは最初に生のままの米を炒めてから炊く。オリーブオイルを使い、玉ねぎなどの具を炒めてから米を加え、米が透き通るまで炒め、最後に温めたブイヨンを加えて、鍋に蓋をして炊くのである。 チャーハンも似たような手順で、具を先に炒める。しかしチャーハンではあくまで炊き上がったご飯を加える。つまり、日本語でいえば焼き飯である。


ツナVSシーチキン
ツナとは英語でマグロを指している。 つまり、ツナの缶詰というのはマグロの缶詰のことである。 ツナには「ライトミートツナ」と「ホワイトミートツナ」の二種類があり、ライトミートツナはキハダやメパチマグロが原料で、淡い桃黄色の肉色。ホワイトミートツナは、その名のとおり肉色が白いのが特徴で、ビンナガマグロが原料だ。このホワイトミートツナは、ライトミートツナよりもタンパク質が豊富なことから、欧米ではシーチキン(海の鶏肉)と呼ばれている。 つまり、これが「ツナ」と「シーチキン」の違いであるといいたいところだが、我々日本人が現在シーチキンと呼んで親しんでいるものは、じつは「はごろもフーズ」が発売しているツナ缶の登録商標。あくまで商品名である。 マグロの油漬け缶詰は、はごろもフーズの創業者の先代後藤磯吉氏が陣頭指揮をとって1931年に製品化したもので、当時は輸出専門。戦後になって「シーチキン」と名づけ、国内向けに販売を開始したところ大ヒット商品になり、いつしか「ツナ缶」= 「シーチキン」というイメージが日本人の頭の中にでき上がっていったのだ。 つまり、同じツナの缶詰でも、シーチキンと呼んでいいのははごろもフーズのツナ缶だけ。他はツナというわけだ。


ドロップVSキャンディ
子供が大好きなキャンディ。そういえば、缶に入った「ドロップ」は、「キャンディ」とどう違うのだろうか? じつはキャンディとは、洋風のアメのことで、砂糖や水アメを主原料として作った菓子の総称だ。キャラメルやヌガーなどのソフトキャンディはもちろんのこと、ドロップやタフィといったハードキャンディ、さらにはラムネ菓子やマシュマロなどもすべてキャンディに含まれる。つまりドロップもキャンディの一種というわけである。 ドロップが含まれるハードキャンディとは、140~160度の高温で糖液を固く煮詰めたもの。 一方、ソフトキャンディとは、140度以下の中温でやわらかく煮詰めたものである。口の中で溶けるような食感が楽しめる。 また、ドロップは一般に酸味のあるものを指し、果実の味や形に作ることが多い。


な~は行
パーボンVSスコッチ
舶来ウイスキーの代表といえば、「スコッチ」と「パーボン」だろう。 スコッチはその名のとおりスコットランド産のウイスキーで、パーボンはアメリカのケンタッキー州パーボン郡の生まれだ。 産地のほかにも、この二つには大きな違いがある。スコッチは、大麦や燕麦の麦芽を原料に、スコットランド特産の泥炭で麦芽を燻蒸して発酵させるので、独特の香りがある。 これに対してパーボンは、原料の50%以上80%未満がトウモロコシで、あとは麦を用い、ケンタッキー州特有の石灰分の多い水を加えて発酵させる。 同じウイスキーといいながら違いが大きいため、この二つは、英語では綴りを書き分けられている。スコッチは「WHISKY」、パーボンは「WHISKEY」と書くのが慣例だ。


パターVS発酵バター
バターには、普通の「パター」のほかに「発酵バター」と呼ばれるものがある。 日本よりはるか以前からバターが製造されていたヨーロッパでは、当時の技術では牛乳からクリームを分離するのにかなり時間がかかり、その間に自然に乳酸発酵が進んで発酵したバターができ上がった。これが本来の発酵バターである。発酵バターは、普通のバターよりもちょっと酸味があり、特有の香りとコクがある。日本のパターとは少し違った、独特なおいしさのバターだ。 現在では分離技術が進み、バターを作るのに自然に発酵してしまうほど時間がかかることはなくなったが、あえて乳酸菌を加えて発酵させてバターを製造し、伝統の味を守っている。 それに比べ、すでに分離技術が進んだ段階で製造方法が伝えられた日本では、初めから非発酵バターが製造された。そのため日本では、非発酵バターが主流になったわけだ。


パフェVSサンデー
「パフェ」と「サンデー」は、どちらもアイスクリームをメインにしたお菓子である。 パフェは、フランスのお菓子「パルフェ」が日本で「パフェ」に転じたものだ。もともとパルフェとはフランス語で「完壁だ」という意味。つまり、パフェは完壁なお菓子といわれるほどおいしいものだったのである。 一方でサンデーはアメリカ生まれのお菓子である。アイスクリームにチョコレートをかけ、「サンデー・スペシャル」という名で日曜日にのみ売り出したところ好評だった。こうして「サンデー」の名で定着したのだ。 現物を比べてみると、パフェはたいてい背の高い器に入り、アイスクリームや生クリーム、ソース、フルーツなどが層になっていて、見た目も味も豪華だ。 パフェに比べるとサンデーは簡素で、浅い器を用いているのが一般的だ。アイスクリームに生クリームを飾ってソースをかけたものであることが多い。サンデーはパフェに比べて、シンプルな味を楽しむお菓子といえそうだ。


ひやむぎVSそうめん
真夏の暑い日、食欲があまりなくても、「ひやむぎ」や「そうめん」なら冷 たくてのどの通りがいい。ひやむぎとそうめん、パッと見た感じは同じようだが、断面をルーペでよく見れば、その違いがよくわかるだろう。そうめんの断面は丸く、中央に丸い小さな穴があいているのに対し、ひやむぎの断面はたいてい正方形か長方形で、穴はあいていない。 これは、作り方の違いによって生じたものである。 ひやむぎは薄く延ばした生地を細く切っただけだが、そうめんは生地を細く切ったあと、ヨリをかけながら引っ張って延ばすので、断面が丸くなり、真ん中に穴があくのだ。 また、JAS(日本農林規格)では、ひやむぎとそうめんに厳密な太さの違いを設けている。一般的な角棒状のひやむぎの太さは、「幅1.2ミリ以上1.7ミリ未満、厚さ1ミリ以上1.3ミリ未満」と決められている。これ以下の細さのものがそうめんとなる。


ブイヨンVSコンソメ
シチューや洋風の煮込み料理などを作るときに便利な「コンソメ」や「ブイヨン」。入れるだけで味がぐっと引き立ち、本格的な風味が楽しめる。 このコンソメとブイヨンは、本来は別のものである。 ブイヨンとはフランス語で「煮る」という意味の動調、コンソメは「完成する」という意味の動調に由来している。 つまりブイヨンは魚や肉、鶏と野菜などをじっくり煮て、時間をかけてとったダシのことであり、コンソメとは、そのブイヨンをベースにして、さらに牛や鶏、香味野菜などを煮込んで濁りを取り、漉したスープのこと。 簡単にいえば、ブイヨンは単なるダシであり、コンソメは完成したスープということになる。 ただ、現在日本で市販されている固形や粉末などのコンソメやブイヨンは商品名として使われているだけで、内容的にはほとんど同じ。メーカーによって風味が多少違う程度である。


ブランデーVSコニャック
「ブランデー」とはワインを蒸留して作る酒だが、この呼び名は、英語でその製法からとった「ワインを燃やしたもの」という意味である。一方の「コニャック」は、ブランデーの中の、ある特定のもののみに許される呼称だ。 その生産量も質も、世界一を誇るフランスのブランデー。中でも、とくにフランス南部のコニャック市を中心としたシャラント地方で産出されるプランデーに限ってコニャックと呼ばれている。 コニャックは、1909年に政令によって定められた由緒正しい酒。6つに分けられたシャラント地方の区域内で製造され、他の区域のものをプレンドしていないもののみにコニャックの名が与えられているのだ。 同様のブランデーにアルマニャックがあり、じつはワインからブランデーを作りはじめたのは、同じく南フランスのガスコーニュ地方のほうが早く、歴史を誇っている。ところが、消費地への交通の便などから流通に後れをとり、一位の座をコニャックに譲ることになってしまったのである。


プロッコリーVSカリフラワー
「プロッコリー」と「カリフラワー」は、ともにその祖先がキャベツという共通点はあるものの、誕生過程が異なる。 私たちが食べているブロッコリーは、アブラナ科の野生のキャベツの花蕾部分が肥大化したもの。野生キャベツは、あの青汁の原料となるケールに似ている。 一方カリフラワーは、ブロッコリーが突然変異したものに品種改良が加えられて生まれたものである。可食部分が花蕾部分であることは同じだが、ブロッコリーのほうが栄養価は高いとされている。 ヨーロッパではブロッコリーが先に誕生しているが、じつは日本でのデビューはカリフラワーのほうが早く、昭和30年頃から本格的栽培が始まった。ブロッコリーは、それより10年近く遅れてメジャーになったが、今ではブロッコリーの人気がカリフラワーを上回っているようだ。


ま~や行
紀州みかんVS温州みかん
かつての日本でみかんといえば、「紀州みかん」のことだった。約700年前に中国から伝来して熊本県で盛んに栽培され、天正2(1574)年に紀州有田に伝えられて一大産業となった。荒天の中、紀伊国屋文左衛門が海路江戸へと運んだとされる有名なみかんである。 しかし、紀州みかんが日本を代表するみかんだったのは明治時代の中頃までの話。現在では正月用の葉つきみかんとして栽培、出荷されるのがせいぜいといったところだ。 日本人が現在「みかん」と呼んで親しみ、よく食べているのは「温州みかん」である。中国から遣唐使によってもたらされた柑橘類の種子が、400~500年前、鹿児島県長島で偶然発芽したものである。 紀州みかんは小粒で種があるのに比べて、温州みかんは紀州みかんより大きく、種がなくて食べやすかったにもかかわらず、なかなか栽培されなかった。これはかつての日本に「種子なしは家が続かない」という迷信があったためである。 現在では温州みかんには200種近くの系統があり、青いものや赤いもの、酸っぱいものなどさまざまな種が出回っている。


本みりんVSみりん風調味料
ボトルのラベルに「みりん」と書いてあるのに、後ろのラベルをよく見ると「本みりん」と「みりん風調味料」があることがわかる。じつはこの両者、似ているけれど、まったくの別ものである。 本みりんは、もち米と米麹にアルコールまたは焼酎を加えて40~60日熟成させたもので、アルコール度数は14%前後。現代では料理に使用されることが多いが、本来はお酒。みりんは、江戸時代までは甘いお酒として飲用されていた。 一方、みりん風調味料は、醸造用の糖類(ぶどう糖や水アメ)にグルタミン酸や香料を配合したもので、熟成させたものではない。原料も製造方法も本みりんとはまったく違うわけだ。アルコール度も1%未満と低い。 みりん風調味料は、素材に甘味を加えたり照りを出す効果があるが、本みりんは、素材に上品な甘味を加えるだけでなく、生臭さや煮崩れを防ぎ、味の浸透をよくする効果がある。本みりんのほうがより素材の味を引き立てる調味料だといえるだろう。


ら~わ行
ラーメンVSうどん
同じように小麦粉で作られながら、「ラーメン」と「うどん」の差はなかなか説明できない。 うどんは小麦粉に塩と水を加えてこねるが、ラーメンに加えられるのはただの水ではない。炭酸カリウムなどが含まれた、かん水というアルカリ性の溶液でこねているのだ。ラーメンの麺の色を黄色くしたり、独特の香りをつけたり、縮れを生むのが、このかん水の働き。コシを強くする働きも持つ。 しかし食品の安全性が注目されるようになってからは、このかん水使用を控える店も現れ、かわりに卵の黄身で色みを、白身でシコシコ感を、卵殻でコシや粘りを出す工夫が行われているようだ。


ラムVSマトン
「ラム」と「マトン」、どちらも羊の肉のはずなのに、なぜ呼び名が違うのだろうか? ラム肉とは食用にする羊の肉のうち、生後1年未満の子羊のこと。2年以上7年くらいまでの成長した羊の肉がマトンだ。 マトンは牧草臭い特有の匂いがあるのに比べ、ラムは臭みが少なく、味にもクセがない。そのため、一般的にレストランなどの羊料理にはラムが使われている。日本などに輸入されているラムは、ほとんどが生後4~6カ月ぐらいまでの子羊の肉で、とても柔らかい。 それに比べてマトンは、ハムやソーセージの原料にされるのが一般的。独特の匂いがあるが、香辛料を使って調理すれば気にならない。そこで、ハンバーグなどの冷凍食品の材料としてもよく用いられている。


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