日本の主食はお米からパンへ変化しつつある現状を解説

日本の主食はお米からパンへ変化しつつある
1.どこの地域でもどこの国でも、その地域の風土・自然条件に合ったものを育成し、栽培し、それを主食にしています。たとえば、フランスではフランスパンが主食です。その原料はフランス小麦です。ドイツの主食はと聞かれて、じゃがいもと答える人がいます。

たしかにじゃがいももたくさん食べますが、主食はやはりパンです。ドイツのパンの原料は小麦も使いますが、緯度が高い東ヨーロッパでは、フランスのような小麦は作りにくいので、風土にあったライ麦を作り、ライ麦がたくさん混じったドイツパンがドイツの人たちの主食です。

日本の主食は、いうまでもなくご飯です。お米です。かつて日本人は、一人あたり一年間に120キロほど食べていました。いまは60キロです。その減った分を小麦製品で補っています。主食をパンに替える人が増えています。学校給食にもパンが使われています。

しかし、日本ではほとんど小麦が作られていません。87%まで輸入に頼っています。そのほとんどがアメリカ産です。その地域には小麦畑もないのにパンを主食にする人が増えているということは、世界の常識から見ると、非常に不思議なことなのです。


2.世界で見直されているお米の力
2006年は「国際砂漠年」でした。地球の温暖化現象の影響で砂漠が広がって、地球環境に大きな影響を及ぼしています。2004年は「国際コメ年」でした。国連の食糧農業機関(FAO)がリーダーとなって、コメの見直し運動が行われました。日本国内ではあまり大きな取り組みは見られませんでした。

なぜ、お米の見直し運動が行われたのかというと、お米の人口扶養力がとても高いからです。1ヘクタールで日本の農地は10.5人を養えます。韓国は7.5人です。アメリカは0.8人しか養えません。日本も韓国も、農業の中心は水田稲作です。

このことからもお米の人口扶養力が高いことがわかります。しかも水田は連作障害がありません。
いま世界の人口は67億人と言われていますが、そのうちの30億を超える人びとがお米を主食としています。お米は、和食でも洋食でも、どんなおかずと組み合わせてもおいしく食べられます

パンとメザシというのはちょっと合わないでしょう。またパン食は、野菜を食べる量が少なくなります。パンと漬物との組み合わせはほとんど考えられないでしょう。でもご飯なら、いろいろな野菜といっしょに食べることができます。野菜は漬物にして食べます。味噌汁にもたっぷりと入れます。お浸しとしても食べます。煮物にもします。

ファーストフードやレトルト食品などをよく食べるようになったいま、現代人はビタミンやミネラルの摂取が不足しています。ところが野菜はその不足を補うことができます。
また野菜は、食べ物の彩りや香りをうんと豊かにしてくれますから、食べ物を文化としても豊かにしてくれます。

さらに、人間が健康を保つためには、噛むことが大切です。野菜はよく噛まなければ食べられませんから、その点からも大切な食品なのです。このようなことから、お米が見直されているのです。
いま世界全体で見ると、食料は危機的状況にあります。

67億人の人口のうち8億5000万人もの人たちが飢餓状態にあります。そして一日に2万5000人もの人たちが餓死していると言われています。そのうちの1万8000人は5歳未満の乳幼児です。それほど深刻な状況にあります。しかも地球上の人口は増え続けています。

100年前には約16億人でしたが、今日では67億人ですから4倍以上になっています。そしていまも、年間約8000万人近く増加しています。国連は、2005年には90億人を突破すると推計しています。
こうなると、食料はいまの2倍は必要になります。

特に穀物は約3倍必要になると言われています。なぜなら、穀物はそのまま食べるだけでなく、家畜のエサにして牛肉や、牛乳、バター、チーズにと形を変えて人間の食料になっているからです。ですからどこの国も、穀物の生産に力を入れています。

日本の穀物自給率は、わずか28%(2002年、2006年は27%)ですが、ナイジェリアが84%、インドネシアが85%、アメリカ、ロシア、中国、EUは100%以上です。バングラディシュ、インド、パキスタンは100%に近い率です。日本以外の国々は、穀物の自給率を上げることに力を入れていることが、ここからもわかります。

日本は、飼料を含めると年間4000万トンぐらい穀物を輸入しています。そうすると、1200万ヘクタールの土地を海外で借りていることになります。ところが日本では約500万へクタールの農地のうち、水田は270万ヘクタール弱です。そのうち40%(約106万ヘクタール)を休耕田にしています。106万ヘクタールというと、四国四県(香川、徳島、高知、愛媛)の総面積(山も川も平野も含む)が200万ヘクタールですから、その半分程度の面積です。これだけを休耕田にして、海外で1200万へクタールの土地を借りて穀物を作ってもらっているのです。

これから地球規模で食料不足が深刻になってくることは明らかなのですから、穀物の自給率を高めるためにもっと取り組むべきです。まして、水田を休耕田にすることなど、絶対にしてはいけないことです。


いま、外国からの輸入米には490%相当の関税がかかっています。そのため、外国からの輸入米は1俵(60キロ)の国内出回り価格は2万3450円程度になります。国産米が1万6000円程度ですから、外米を買う人はいません。WTO交渉の中では「490%相当の関税は高過ぎる」「上限を200%に抑えるべきだ」と、特にアメリカから強い引き下げ圧力がかかっています。現在日本政府は、「主食のお米は上限枠の例外品目にしてほしい」と主張し、認められたと言っています。しかし予断は許されない状況です。

もし輸入米の関税が200%に下げられれば、輸入米60キロの出回り価格は1万2000円程度になります。日本の農家にとっては深刻な影響が予測されます。




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