自動販売機とともに世界の常識になった缶入り飲料は日本の発明

持ち運びが便利な缶入り飲料
爆発的ヒットの缶入り飲料この40年の間に地球上で爆発的に広がったのが、缶入り飲料です。缶コーヒーをはじめとした缶入り飲料は、なぜこんなに普及したのでしょうか。最大の理由は、飲みたい時にすぐ飲めることです。たとえば、アイスコーヒーを飲むということはかつて、コーヒー豆を挽き、お湯を注いでドリップさせ、冷ましてミルクや氷を加 えるわけですから、時間と手間のかかることでした。

しかし、今は自動販売機さえ近くにあ れば、120円を投じるだけで冷たいアイスコーヒーをすぐに飲むことができます。

また、缶はびんに比べ、軽くて持ち運びがしやすく、冷蔵庫にも収納しやすいという使い 勝手の良さがあります。このため、マイカーや列車で移動してレジャーを楽しむモータリゼ ーションの発達に合わせ、車中や旅先などで重宝されました。

一方、販売サイドからすると、缶入り飲料は30本で1ケースの箱入りになっていて保管や 輸送コストが少なくてすむメリットがありました。スーパーマーケットやコンビニが全国に チェーン展開するのに伴い、缶入り飲料は爆発的に普及していったのです。

全国清涼飲料工業会のまとめによると、2008年に生産された缶入り飲料は約372万klにのぼります。内訳は、コーヒー系飲料が全体の53%を占めて半数を超え、ついで炭酸飲料が約21%、果実飲料が約7%、緑茶飲料が3%余りとなっています。

缶の素材別では、スチール缶が64%と3分の2を占め、残りがアルミ缶です。また、缶の タイプ別では、SOT (ステイオンタブ)が約87%、ふたが付いているボトルタイプの缶が残りの13 となっています。SOTというのは、従来のプルタブ方式同様に缶のタブを手で引っ張って開けられますが、タブが缶から離れない構造になっているものを言います。

面白いのは、飲料の種類によって缶の素材が大別されていることです。炭酸飲料には、主にアルミ缶が使われていますが、コーヒーやジュースには、スチール缶が用いられています。というのも、炭酸飲料は、缶に詰めて密封した後、炭酸ガスが出て缶に圧力がかかるため 缶がへこむ心配がありません。だから、薄いアルミ缶が使われています。

一方、 コーヒーやジュースは、殺菌のために、加熱したまま缶に詰めてふたを開めます。
密閉後に内部の気圧が大気圧より小さくなるため、薄い缶だと内側にへこんでしまいます。
そこで、頑丈なスチール缶が使われているわけです。

缶入り飲料の王様とも言える缶コーヒーが登場したのは、1969年のことでした。上島珈琲(現在のUCC上島珈琲)が、世界で初めての缶コーヒー「UCCミルクコーヒー」を発売しました。びん入りのコーヒー牛乳にヒントを得たもので、容量は250 ml。価格は70円で、喫茶店で飲むコーヒーとほぼ同じ値段でした。UCC コーヒーは翌1970年に大阪で開催された万国博覧会で評判を呼び、大ヒットとなりました。その後、たくさんのメーカーが参入して激しい販売合戦が展開されました。缶コーヒーの生産量は、1975年に年間12万kl台でしたが、1990年には227万klにまで増え、わずか15年間で18倍近くまで急増したことになります。

そして、決定的だったのが自動販売機の普及です。缶入り飲料の自動販売機は、1971年に初めて導入されました。1973年にはポッカと自販機メーカーが共同で、夏は冷たいもの、冬は温かいものが買える切り替え式の自動販売機を開発し、4年後には冷たいものと温かいもの両方が買える併売式も出ています。自動販売機は大ヒットし、1985年には全国に置かれた自動販売機の数が200万台を超えました。

24時間いつでも、喉が渇いた時に自動販売機のある場所に行けば、冷たい、あるいは温かい缶入り飲料を買うことができる利便性が、消費者に強く支持されたのです。とくに、休み時間返上で忙しく働いているサラリーマンがオフィスで、あるいは街かどで一息入れるのに、自動販売機の缶入リコーヒーや缶入り飲料は最良最適の飲み物となったようです。

こうして、缶入り飲料は1980年代半ばには、清涼飲料全体の5割を超える巨大なマーケットヘと成長しました。しかし、1982年に登場したペットボトル入り飲料の生産量が急増し、2000年には缶入り飲料を抜き去りました。今ではペットボトル飲料が清涼飲料全体の6割を占めるようになりましたが、缶入り飲料も缶コーヒーを主軸に一定の人気を保っています。
休み時間返上で仕事をするというあくせくした働き方が変わらないかぎり、自動販売機で買った缶入り飲料を飲んで一服する、というサラリーマンの習性にもおそらく大きな変化はないでしょう。


蒸し暑い日には欠かせない自販機の存在
日本にきた外国人がまずびっくりするのは街のあちこちに自販機がある風景だという。その数の多さにびっくりする人もいれば、誰もが酒類を買える状況に驚く人もいる。日本人と機械との一体的なイメージをあらためて確認する人、その数の多さに日本の安全性の高さをみる人などさまざまだが、皆一様に自販機のもたらしてくれる利便性に馴染んでいく

逆に、海外にでかけた日本人が一番とまどうのが、自販機でものを買える機会が極端に少ないことだ。喉の渇きをちょっと癒すにも面倒なことばのやりとりを強いられ、店が閉まってしまうと缶ジュースすら簡単に買えなくなる不便さに多くの日本人がとまどう。いつでも、どこでも、簡単に、飲料や酒、煙草が買える利便性を享受できる日本が世界的にみれば例外的な存在であることに気づくのは、そんな時かも知れない。

いま、日本には265万台の飲料自販機がある。人口1000人当りでいうと20台弱にものぼる。飲料の半分は自販機によって販売されていることが示唆するように、飲料マーケットの成長は自販機に大きく依存している。

実際、自販機チャネル戦略は、飲料メーカーの販路拡大戦略においてもっとも重要な地位を占めており、飲料のトップメーカー「コカ・コーラ」が業界一の自販機台数を誇っているのは偶然ではない。ヨーロッパなどに比べると、アジアモンスーン地域の夏はつらい。高温高湿の気候は大量の汗を流させ喉を力ラカラにさせる。自販機がない日本の夏は考えられないといってもいい。自販機は暑い夏に欠かせない、都会のオアシスだとのたとえは本当に的を射ている。
その一方で、自販機にはさまざまの批判もある。

道路のはみ出し問題や缶・瓶のリサイクル問題、青少年の飲酒問題などだ。実際、あちこちで買えるという利便性が、空き缶・瓶のポイ捨て状況を生み出している可能性は否定できまい。それを捉えて、都会の迷惑施設と命名する人もいる。要は、自販機から多大な利便性を享受している消費者自身の常識が問われているわけだが、それは食品メーカーにとって免罪符を意味しない。社会性に配慮した自販機チャネル戦略の展開が、食品メーカーには今後とも求められよう。



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