新世代日本人アスリートたちは外国でも自己主張している

ブランド化する日本人アスリート
メジャーリーグへの挑戦を「やりたい」ではなく、「やらなくてはいけない」と位置付けたダルビッシュ有投手の意気込みは、外国に住む日本人には心強いメッセージとして伝わりました。

野茂英雄投手以来、数十人の選手が追いかけたメジャーの夢は、イチローは別格として成功例の少ないまさにアメリカンドリームです。スポーツ好きの多いハリウッドで定説となっているのも、日本人選手の小柄な器用さばかりが取り上げられます。アメリカ人や中南米人のスーパースターに匹敵するパワフルな人材というイメージがないのは、プレイヤーたちが醸し出す雰囲気にも左右されています。

今までの日本人メジャーリーガーは、どことなく「借りてきた猫」「その他大勢」的な行儀のいい選手ばかり、というのがメジャー通のハリウッド人の圧倒的な意見です。

それは言語力や異文化の影響も多いのでしょうが、華々しい新人デビューを飾ったレッドソックスの松坂大輔や、ヤンキースでワールドシリーズMVPにもなった松井秀喜にさえも共通する「影の薄さ」に帰着しています。

ところが、若い頃の野茂もそうだったように、ダルビッシュには、どことなく「ふてぶてしさ」が漂っています。つまり、よくいえば自信たっぷり、悪くいえば上から目線の威嚇オーラが、メジャーのマウンドで放たれているのです。その、日本流にいう「食って掛かる」態度こそが、アメリカ人には魅力的に映り、今までの日本人選手とは違った視線で注目を浴びる要因となっているのです。

喝采を浴びる新世代日本人アスリートたち
国力が弱まり、以前のような憧れの国でなくなりつつあるアメリカですが、このことは言葉や文化の違いを克服して大成する外国人、特に極東アジアの小さな国日本からやってきたアスリートヘの敬意を生んでいます。

  その中でも、注目したのは、ハリウッド人が異口同音に言う、日本人アスリートは以前に比べて「自分色」を出すことを跨踏しなくなったという点です。

確かに、喜怒哀楽をあまり表現しない「サムライ」的な日本人アスリートの姿は、イチローや松井を筆頭にしたメジャーリーグだけでなく、緻密な野球でベースボールを叩きのめしたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)2連覇や、オリンピックでも見かけてきました。最近の若手アスリートは、ガッッポーズや満面の笑顔で自己主張することに抵抗がありません。

女子ワールドカップを制したなでしこジャパンのハデな祝勝ぶりや、ロンドン・オリンピックの水泳400m個人メドレーで、水の怪物フェルプスを抑えて銅メダルを獲得した高校生スイマー萩野公介のものおじしない態度に、世界もビックリのニュー・ジェネレーション・ジャパニーズ(新世代の日本人)を垣間見ることができました。

全米を驚かせた電撃トレードでヤンキースに移籍したイチロー。そのイチローに憧れてマリナーズに入団した川崎宗則は、持ち前の明るさと高校球児のような溌刺としたプレイでチームメートの人気者となりました。

「はい!」「ナイスプレイ!」といった日本野球独特の声掛けは、「得体のしれないアジア人」という従来の日本人プレイヤーの枠から見事にはみ出してくれたのです。

「大変そうなことを大変そうにやっている人はいっぱいいる。でもあいつは、それを見せずに元気いっぱい。みんなが彼とプレーしたいという現象を生み出した」というイチローの賛辞が、川崎の野球観のみならず、彼の日本人としての人生観をも物語っているのです。

また、最終日に赤いシャツを着るタイガー・ウッズの「サンデー・レッド」の向こうを張り、赤いスラックスを勝負ウェアにするゴルファー石川遼の度胸。彼は、英会話を積極的に勉強してアウェイ環境に和むことを怖がらない精神力があります。

そして、英語や異文化を言い訳にして世界に出なかった一昔前の日本人アスリートと違い、流暢な英語でインタビューに答える女子プロゴルファーの宮里藍、フロリダの英才教育学校仕込みの技術と得意技エアー・ケイで成長著しいテニスの錦織圭などは、今や、アメリカ人が一目置く「規格外の日本人」なのです。







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