1.日本語で似ている意味の言葉の正しい使い分け│自然編

→あ~か →さ~た →な~は →ま~や
日本語は世界の言語と比べても驚くほど語彙数が多いのが特徴です。多彩な表現ができる一方で似たような意味の言葉もたくさんあり、迷うケースも少なくありません。

ここでは自然に関する勘違いしやすく、間違えやすい日本語を紹介します。

あ~か行
アシカvsアザラシ
ヒレ状になった四つの肢で流線形の海獣「アシカ」と「アザラシ」は、互いに似た動物であり、ともにきき脚類だ。しかしアシカはオットセイと同じアシカ科、アザラシはアザラシ科。両者には異なる点も多い。 まず、耳が違う。アシカにはつんと立って花のつぼみのようなかたちの耳介があるのに対して、アザラシは水の抵抗を少なくするため、なくなって穴が開いているだけ。顔も、アシカが鼻先が長い犬顔なのに比べ、アザラシは鼻先の短い猫顔だ。なおアシカの成獣のオスには、おでこにコブのようなでっぱりがある。 次に肢。アシカは長い四肢を持ち、陸上で体を支えられるが、アザラシは前肢が短く後肢が後ろを向いているため体を支えきれず、陸にいると転がっているように見える。進むときは這うようにする。 よく見ると体の表皮も違う。アシカの毛皮は、短い下毛と長い剛毛の緻密な二重構造で、部分的にヒレには毛がないところもある。基本的に褐色で、模様のようなものは一切ない。 一方でアザラシの毛皮は、毛足が短く、毛の色は褐色を帯びた灰色から黒で全身に斑紋がある。この斑紋と毛色で19種類のアザラシを分類できるのだ。 すぐ見分けがつくのは、体型だろうか。アシカは比較的細身なのに対し、アザラシはやや丸っこい。


一時雨vsときどき雨
「ときどき」「一時」など、天気予報には暖昧ともいえる表現が少なくない。 これはラジオなどで耳から聞いても、わかりやすくするための表現だ。 だが、予報官や地域によって表現が異なっては混乱を招く。そのため、天気予報に使われる表現は厳密に定義されている。 たとえば、「ときどき雨」は雨が断続的に降り、その期間が合計して、予報期間の4分の1以上で2分の1未満のときに使われる。また、「一時雨」は雨が連続して降り、その期間が予報期間の4分の1未満のときに使われる言葉だ。 「のち雨」は予報期間の後半に雨が降ると予想されるときの表現である。 ほかにも、「やや強い風」は強風注意報には達しないが、基準の約60%以上の風速が、「強い風」は基準以上の風速が予想されるときに使う。 また、時間帯の表現も明確だ。1日24時間を午前0時から3時間ごとに区切り、「午前3時頃まで」「明け方」「朝のうち」「昼前」「昼過ぎ」「夕方」「宵のうち」「夜遅く」と決められている。


イモリvsヤモリ
細長い体で、お互い形は似ていても、「イモリ」は両生類、「ヤモリ」は爬虫類である。まず、住むところは、イモリが水の中で、ヤモリは家の中などの陸上。 イモリは井戸を守る、ヤモリは家を守るといわれるところからも想像がつく。 両生類で水の中に住むイモリの卵には殻がない。 外見にも、いろいろな違いがある。 両生類でカエルの仲間のイモリにはウロコがないが、爬虫類でワニの仲間のヤモリにはある。腹面の色がイモリは赤色の模様があるが、ヤモリは灰色で模様はない。 大きく違うのは前足の指の数で、イモリは4本、ヤモリは5本だ。さらに、イモリにはないカギ爪がヤモリにはある。 よく間違えられるイモリとヤモリだが、こうしてみると、ずいぶん違う生物だとわかるはずだ。


隕石vs流れ星
夜空にスーッと帯のように光の筋を引いて飛んでいく流れ星を見ることがある。「流れ星」は時として「隕石」と混同されるが、両者の成立過程はまったく異なる。 流れ星とは、宇宙を浮遊している米粒や砂粒程度のチリが集まったもので、いわば慧星の尾と同じだ。大気圏を通過するとき燃え尽きてしまうので、地球上に落下することはない。 一方隕石とは、木星と火星の間を回る小惑星が、互いの衝突などにより軌道をはずれたとき、その進路上に地球があったために引力に引き寄せられて落下してきたもの。大気圏を通るとき摩擦熱で燃え尽きるものもあるが、燃え残った大きいものは数トンに及ぶこともある。


ウイルスvs細菌
病気の原因となる微生物には、コレラ菌や赤痢菌などの「細菌」と、エイズウイルスやインフルエンザウイルスなどの「ウイルス」がある。 細菌は細胞分裂によって増殖する単細胞生物で、病原菌の場合、人間の体内に入ると、人間の細胞に取りついで栄養を吸い取り、毒を吐き出して人間の細胞を殺してしまう。 細菌が原因でかかる病気のなかには、腸チフスや赤痢や食中毒といった病気があるが、抗生物質で細菌の細胞を攻撃すれば、たいていは治すことができる。 これに比べてウイルスは厄介だ。ウイルスはタンパク質の外壁で遺伝子を包んだだけの単純な構造体で、自分の細胞がなく、ほかの生物の細胞に入り込み、その細胞に自分の複製を多量につくらせる。細胞内でウイルスの複製が大量につくられると、その細胞は破壊されて死んでしまう。 ウイルスに入られた細胞を傷つけずにウイルスだけを破壊する薬は、まだ開発されていない。ウイルスに感染しないためには、健康な体づくりを心がけ、免疫力を高めておくしかない。


海藻vs海草
「海草」と「海藻」、どちらの表記も目にするが、植物学的にいえば、この二つはきっちり区別することができる。 文字で見ればわかるとおり海草は「草」で、海の中に生えていても花を咲かせ、種子を作って繁殖する。いわゆる被子植物であり、アマモ、スガモなど海岸近くの海底に生えるものをいう。海底深いところに生息することはないわけだ。 一方の海藻は「藻」だから、胞子で繁殖する胞子植物。日常的に食用とされているのは、ワカメにしろ見布にしろ海苔にしろみんなこの海藻である。紅藻、褐藻、緑藻の三種に分類され、世界中では二万種ほどが生息している。


雷vs稲妻
「雷」は、もともとは「神鳴り」といったように、ゴロゴロという音こそが「雷」である。あの音は、空気中に放電が起こったことで熱せられた空気が膨張するときの音である。 遠雷ならゴロゴロですむが、近いとドンというような爆発音に近いものに聞こえる。 一方「稲妻」は、稲光のことを指している。「稲」の字が使われたのは、雷と稲作のかかわりが深かったからである。 稲の結実の頃はちょうど雷が多い季節だったため、雷の光が米を実らせると考えられた。その光を「稲の夫」ととらえ、稲を身ごもらせるというので結実の縁起をかついだのである。 その後、なぜか次第に、夫は妻に変わってしまった。


寒冷前線vs温暖前線
天気予報では、「寒冷前線」や「温暖前線」という一言葉をよく耳にするが、これらは一体どんなものだろうか。 そもそも日本に四季があるのは、季節ごとに気団がやってくるからである。 気団とは気温や温度などが広い範囲にわたってほぼ一様な性格を持つ空気の塊をいう。たとえば、厳しい冬の寒さをもたらすのは「シベリア気団」で、蒸し暑い夏をもたらすのは「小笠原気団」、梅雨や秋雨をもたらすのは「オホーツク気団」である。 前線は、性質の異なる二つの気団の境界である。温暖前線は、寒気と暖気の境界にできる前線だが、寒気より暖気のほうが勢力が強いために、暖気が寒気の上を這い上がるようにして進む。その結果、前線通過後は温度が急激に上がるわけだ。 逆に寒冷前線は、暖気より寒気のほうが勢力が強くて、寒気が暖気の下にもぐり込むようにして進んでくる。その結果、通過後は急速に温度が下がるというわけである。


気象予報士vsお天気キャスター
「お天気キャスター」は、語りも上手で、気象専門家の判断をわかりやすく楽しく伝えてくれる。では、お天気キャスターは、気象予報の専門家としての「気象予報士」の資格を持っているのだろうか? たしかに資格があるほうが視聴者に信頼感を与えられるし、持っている人も多い。しかし、天気の解説をするだけなら、必ずしも気象予報士の資格を持っていなくてもいい。 ただし、深夜の刻々と変わる台風情報のような場合は、天気図を解析する気象予報士としての知識がないととっさの判断ができないというケースもある。このように、天気について独自の見解を述べるには、気象予報士の資格が必要だ。 もちろん、テレビに出る気象予報士はほんの一部であり、気象予報士の仕事はテレビ出演だけではない。


霧vs靄
大気中の水蒸気は、地面近くが冷えることで凝結する。すると小さな水滴になって空気中を浮遊することになる。これが「霧」や「靄」と呼ばれるものだ。 視界が悪くなる点で共通しているが、両者は水平方向でもののかたちがはっきり見える距離、水平視程で区別される。 水平視程が1km未満なら霧、1km以上なら靄だ。 霧の種類は数多くある。湿った温かい空気が冷たい地表面や海上を移動するときに下の空気が冷えてできる移流霧、風が弱いときに地表面の放射冷却で起きる放射霧、気温の異なる二つの湿った空気の混合でできる混合霧のほか、蒸発霧、蒸気霧、前線霧などさまざまである。 なお、視界を悪化させる気象現象には、ほかに煙霧や霞がある。 煙霧は靄と同じ視程1km以上で、湿度が75%未満のものを指し、75%以上だと靄という。 靄は日常的によく使われているが、気象用語としては定義されていない。


クロコダイルvsアリゲーター
ワニは全部で二十数種類と、ほかの爬虫類に比べて極端に種類が少ない。特徴の違いから、クロコダイル科とアリゲーター科に大きく分かれ、ほかにインドガビアル一種のみのガビアル科がある。 外見上の特徴は、頭を上から見て、口先が細くとがって二等辺三角形に近いのが「クロコダイル」、丸みがかつて、幅が広いのが「アリゲーター」だ。ガビアルは口が細長く飛び出している。 また、口を閉じたときに顔を真横から見ると、クロコダイルは上下の歯が外から見え、アリゲーターは下の歯が上あごの内側に隠れて見えない。そのため、クロコダイルのほうが狂暴に見える。 事実、クロコダイルは極めて獰猛で、アリゲーターは比較的温和だ。「人食いワニ」として恐れられる、7mにも達するイリエワニやナイルワニは、いずれもクロコダイル科に属する。 両者は生活の仕方も異なる。クロコダイルは陸上にいるが、アリゲーターは水中にいる。温度の安定していない陸上に住むクロコダイルの鱗板には熱感知器官があり、温度変化に敏感だ。


木枯らしvs空っ風
「木枯らし」も「空っ風」も、冷たい北風である点は同じだが、木枯らしと空っ風は、吹く季節が異なる。 木枯らしは、秋から冬への季節の変わり目に吹く冷たい北よりの強風。色づいた木々の葉を吹き落とし、枯れ木のようにしてしまうことからそう呼ばれる。 気象庁では、10月半ばから11月末日にかけて西高東低の気圧配置になり、北から西北西までの風が、最大風速毎秒約8m以上吹く状態を木枯らしという。 毎年、東京と大阪の木枯らし1号が発表されるが、11月7日前後の立冬の頃に吹くことが多いようだ。条件が揃っても12月に入ると木枯らしとはいわないため、木枯らし1号のない年もある。空っ風は、日本海側から山脈を越えておもに関東地方など太平洋側に吹く、冬から春先にかけての強い季節風。シベリア高気圧からの風が運んできた湿気は山脈の日本海側に雪となって降るため、乾いた冷たい風となる。とくに上州(群馬県)でよく使われる。


国立公園vs国定公園
美しい自然を堪能できる「国立公園」は全国に点在しているが、これと似たものに「国定公園」も存在する。これらは一体、どう区別されているのだろうか。 いずれも自然公園法の定める自然公園である点は同じだ。違うのは管理者である。 国立公園は、「わが国を代表するに足りる傑出した自然の風景地」であって、環境庁長官が自然環境保全審議会の意見を聞いて指定したもの。国が保護、管理し、利用者の便宜をはかっている。 国定公園も、指定するのは環境庁長官だ。「国立公園に準ずるすぐれた自然の風景地」を、都道府県の申し出によって自然環境保全審議会の意見を聞いたうえで指定する。ただしこちらは国ではなく、都道府県が保護、管理する。


さ~た行
サモアvs米領サモア
南太平洋中部に浮かぶサモア諸島のトゥトゥイラ島は、観光地として有名である。熱帯貿易風気候で、一年じゅう高温多湿。ポリネシアン人種のサモア人が暮らす、熱帯の楽園だ。 このあたりの地図を見ると、トゥトゥイラ島と周囲の小さな島には「米領サモア」とある。ところが、その西側にあるサパイイ島とウポル島を中心とする小島は、たんに「サモア」と記されている。同じサモアなのに、「米領サモア」と「サモア」。この両者、どんな関係なのだろう? サモア諸島は1721年にヨーロッパ人によって発見されている。1740~1780年にはイギリスやドイツ、アメリカなどが勢力争いを繰り広げ、99年の協定でドイツが西経171度線を境に領有し、東部をアメリカが獲得。 その後、西サモアはニュージーランドに統治されたが、1962年に西サモアとして独立し、1997年にサモアと改称して現在に至っている。つまり、サモアは完全な独立国である。 それに比べ、アメリカが統治した東部(米領サモア)は、今もアメリカの統治領のままだ。その結果、同じサモアでありながら、独立国のサモアは今も南太平洋地域の伝統的な社会組織である首長(マタイ)制度が残るなど、伝統文化が色濃く残っているのに対し、米領サモアはアメリカの影響を強く受けた地域となっている。


小暑vs大暑
陰暦では1年を24に分けて季節区分をしている。これが、易に使われる暦には必ず掲載されている二十四節気といわれるものだ。立春とか立秋のように、分かれ目にはそれぞれ名前がついている。 「小暑」や「大暑」も二十四節気のなかのひとつで、小暑は陰暦の6月、太陽暦でいえば7月7日か8日にあたる。文字でもわかるように、少しだけ暑いということは、そろそろ梅雨明けが近づき、暑さが本格的になってくることを意味している。 これに対する大暑は、太陽暦の7月22日か23日で、暑さも本番となり非常に気温の高い日が続くと教えているのだ。小暑と大暑の間が暑中というわけで、本来の暑中見舞い状は、この期間に出すのが正しい。


震度vsマグニチュード
「マグニチュード」とは地震そのものの大きさを表すのに対し、「震度」とは地震の際の各地の揺れの大きさを表す。両者の関係は、電球の明るさと机の上の明るさによくたとえられる。電球の明るさは電力の単位ワットで表されるが、明るい電球を使っていても電球から遠ければ机の上は明るくならない。マグニチュードの大きな地震でも震源が遠かったり深かったりすれば震度は小さい。震度はまた、地盤の質の違いにも影響している。 マグニチュードは1935年にアメリカの地震学者リヒターが考案した。マグニチュードが1増えると、地震のエネルギーは約30倍になり、マグニチュード8以上を巨大地震と呼ぶ。関東大震災のときのマグニチュードは7.9、阪神淡路大震災のときのマグニチュードは7.2だった。 震度は、日本では独自の揺れの度合いを0~7の10階級(5、6には強弱がある)に分けた気象庁震度階級を使っている。1996(平成8)年に改正されるまでは、体感や建物の倒壊率などで決めていたが、改正以降は震度計で測った地震の加速度などから客観的に決められるようになっている。


睡蓮vs蓮
どちらも水中に生えて、花を水上にぽっかりと浮かばせている「蓮」と「睡蓮」。ともにスイレン科スイレン属の植物だが、どこがどう違うのだろう。池や濠に咲いている光景を見ても区別がつかないものだ。西洋では、モネの描いた「睡蓮」の絵が有名だが、蓮との区別がつかず、どちらもロータスと呼ばれているほどである。 日本では仏教画に描かれることの多い蓮がよく知られていて、阿弥陀如来像の足元に咲いているのは、たいていが蓮の花だ。 この二つのいちばん大きな違いは、睡蓮は、花も葉も水上に浮かんでいるのに対し、蓮は、水中から葉が縦に伸び、花も水面から立ち上がった茎に咲く点である。蓮の花は睡蓮よりも大きい。睡蓮の雌しべが一本なのに対し、蓮はたくさんの雌しべがあり、ひとつひとつが蜂の巣のような形に埋もれているようにも見える。ここからハチスと呼ばれるようになり、やがて「ハス」という名前に変化したのである。 仏教とともに日本に伝わり、長年親しまれてきた蓮に比べ、睡蓮は大正時代に入ってから輸入されたもので和名はヒツジグサ。午後2時頃の未の刻になると花が咲き、夜になると閉じてしまって眠っているようにみえるところから、園芸上でつけられた名前が睡蓮だった。


赤外線vs遠赤外線
すべての電磁波のうち、人間の目で捉えることができるものはほんの一握りである。見える光の波長は「可視光線」と呼ばれている。 「赤外線」とは、波長の長さが0.8~1000ミクロン(1ミリ)の光で、太陽光線の中で、人間に見える光のすぐ外側にある。 その赤外線の中でも、可視光線にもっとも近い順から近赤外線、中赤外線、「遠赤外線」と名づけられている。おいしい魚ややきいもが焼けるとか、治療効果があるなどといわれている遠赤外線は、赤外線の中では、いちばん可視光線から遠い場所にある光というわけだ。 遠赤外線の調理器で肉や魚などを焼くとおいしいのは、遠赤外線の波長が、炭の温度帯と一致しているから。つまり、炭は遠赤外線を放出して、肉や魚の奥までじっくり焼き上げているのである。


ゼラチンvsコラーゲン
「コラーゲン」とは、動物の中に最も多く含まれているタンパク質だ。 とくに皮膚や骨に多く、血管や内臓、目、脳などにも分布している。体の若々しさと 健康維持には欠かせないものである。 最近では、「ゼラチン」にもコラーゲンと同じ効果があるとされ注目を浴びているが、この両者に何か違いはあるのだろうか? 結論からいえば、両者にはそれほど違いがない。食品として摂取するならどちらも効果は同じだ。 コラーゲン分子は細長い3本の分子が三つ編みのような形になっているが、熱にかけると、3本の分子がはずれてバラバラになる。これがゼラチンだ。つまりゼラチンを食べることはコラーゲンを食べるのと同じというわけである。


大寒vs小寒
暑さに小さいのと大きいのがあるのと同様、二十四節気では寒さにも大小がある。「小寒」と「大寒」だ。 小寒は太陽暦の1月5日頃で、ここから「寒に入る」といい、2月初めの節分までを「寒の内」または「寒中」と呼ぶ。節分というのは、この二十四節気の節を分ける日という意味。節分は「寒明け」ともいわれるように、次の日は立春である。 この寒の内に、もうひとつあるのが大寒。大寒は1月の20日頃である。1年じゅうでいちばん寒いという日本の気候をぴったり言い当てたような暦である。 日本の気象観測史上の最低気温が旭川で記録されたのも大寒と立春のちょうど中間である。また、死の初律で知られる八甲田山の雪中行軍が行われたのも大寒のころだった。


太平洋vs大西洋
俗に、太平洋には真ん中にハワイがあるから点がある(「太」)などといわれるが、実際はそうではない。翻訳のもとになった言葉の違いによる。 「太平洋」は、初めて世界一周を果たしたマゼランが、航海中一度も嵐に遭わなかったことから名づけた「Mar Paciffico(穏やかな海)」の訳だという。 日本語で「Paciffico」にあたる言葉は「泰平」で、「泰」の略字である「太」の字を使ったのだ。「Atlantico(アトラスの海)と呼ばれていた海を、初めて「大西洋」と記したのは1602年に中国の明で布教していたマテオ・リッチ。西洋の前方に開けた大きな海という意味で使ったという。これが日本にまで伝わった。 つまり、太平洋の「太」は「泰平」の「泰」で、大西洋の「大」は「大きい」の「大」というわけだ。


台風vsハリケーンvsサイクロン
これらは三つとも同じ気象現象だが、発生する海によって名前が異なる。 日本の位置する北太平洋西部では「台風」、アメリカなど北太平洋東部や北大西洋では「ハリケーン」、インド洋では「サイクロン」という。 台風は熱帯低気圧の発達したものだが、熱帯低気圧は次のような国際分類がある。日本で熱帯低気圧と呼ばれる中心付近の最大風速(以下同)が17メートル毎秒未満がトロピカル・ディプレッション、日本で台風と呼ばれるもののうち17~25メートルがトロピカル・ストーム、25~33メートルがシビア・トロピカル・ストーム、強い台風と呼ばれる33~44メートルと非常に強い台風と呼ばれる44~54メートルがハリケーン、サイクロン、タイフーンだ。 なお、トロピカル・ストームの渦の巻き方は、北半球と南半球で違う。北半球は時計回り、南半球は反時計回り。これは雲の集合体が地球の自転によって渦を巻き始め、発達したものだからである。


中秋の名月vs仲秋の名月
「中秋の名月」と「仲秋の名月」などというと、どちらかが間違いか、または同じ意味かと思いがちだが、両者の表記はともに正しく、二つの言葉が指す月は少し異なる。 まず中秋の名月。中秋とは、旧暦で秋である7月、8月、9月のほぼ真ん中にあたる8月15日のことだ。中秋の名月とは8月15日、十五夜の名月のみを意味する。 一方の仲秋の名月を楽しめるのは、もう少し長い。旧暦では各季節の最初の月に「孟」、真ん中の月に「仲」、最後の月に「季」をつけていた。秋なら7月が孟秋、8月が仲秋、9月が季秋。もちろん、仲春や仲冬もある。 つまり8月の月内なら、すべて仲秋の名月と呼べるわけだ。空気が澄む旧暦8月は、十五夜以外の十四夜や十六夜などの月も美しい。この月は、中秋ではなく仲秋の名月ということになる。


注意報vs警報
気象庁が発表する「注意報」や「警報」は、定められた基準値によって発令されている。たとえば東京地方に大雨が降った場合、1時間の雨量が30ミリを超えると予想されたら「大雨注意報」が、50ミリを超えると予想されたら「大雨警報」が発令される。 「注意報」は災害が起こる危険があるときに発令されるもので、「警報」は重大な災害が起こるおそれがあるときに発令されるもの。基準値に達してから発令されるのではなく、あくまで予想段階で発令される。実際に基準値を超えてから発令しても意味がないからだ。 ほかにも風雪や強風、波浪、高潮、大雪、雷、乾燥、濃霧、霜、なだれなどにも基準値が設けられており、その予想される程度によって、注意報か警報が発令されている。ちなみに、大雨と洪水は別ものだが、連動して出されることが多く、「大雨洪水注意報」「大雨洪水警報」となる。

な~は行
夏日vs真夏日
「夏日」と「真夏日」では、真夏日のほうが暑そうだと見当がつくものの、実際にはどのように使い分けられているのだろう。これは温度の違いによる。その日の最高気温が摂氏25度以上の日が夏日、30度以上の日が真夏日である。 真夏日の年間の平均日数は、那覇が約80日、東京が約50日、札幌でも約10日ある。 また、最低気温が25度以上の夜を熱帯夜という。地球温暖化、ヒートアイランド現象の影響で、近年、東京の真夏日、熱帯夜は増えている。 なお、最近は日中の最高気温が35度以上を指す酷暑日という言葉が使われるようになった。気象庁はまだこの名称を使っていないが、真夏日、熱帯夜などもマスコミなどが使い始めてから、追随して統計などに使うようになったものだ。 一方、冬にも冬日、真冬日がある。 こちらは同じ最高気温で決める夏日と真夏日の関係とは違い、その日の最低気温が0度未満の日を冬日、最高気温が0度未満の日を真冬日としている。


春の七草vs秋の七草
日本には1月7日に七草粥を食べる風習があり、七草粥を食べれば、邪気を払い万病を除くことができるといわれている。もともとは中国から伝わった風習だが、おせち料理で疲れた胃を休め、野菜が乏しい冬場に不足しがちな栄養素を補うという効能もあって、長い間、日本人の間でしっかりと根づいてきた風習である。 この七草粥に入れる七草は、春の七草と呼ばれ、芹、なずな、御形、はこべら、仏の座、すずな、すずしろの7種類。これらは1362年頃に書かれた『河海抄』という文献に紹介されている。 春の七草と同様に、秋の七草も存在する。種類は萩、尾花、葛、撫子、女郎花、藤袴、桔梗。 こちらは万葉の歌人、山上憶良が二首の歌に詠んで以来、日本の秋を代表する草花として親しまれるようになったものだ。 春の七草が食べるものなのに対し、秋の七草はあくまで観賞用。間違ってもお粥に入れて食べないように。


軟水vs硬水
地上に自然に存在する水は、必ずミネラル分を含んでいる。そのうちの、マグネシウムとカルシウムの量によって硬度が決められている。 マグネシウムやカルシウムの量が多いほど硬度の高い水とされる。 WHOでは、1リットルあたり60ミリグラムまでが軟水、120ミリグラムまでが中程度の硬水、180ミリグラムあると硬水としている。石けんとの反応具合が目安となり、硬度が高いほど石けんとよく反応して泡立ちが悪くなる。 日本の水道水のミネラル量は50ミリグラム前後で、WHO基準によれば軟水にあたる。 一般に、軟水のほうがご飯を炊いたりお茶を淹れたりするのに向いているといわれる。一方で、肉の臭みやアクを取るには硬水のほうが向いているとされる。


ひょうvsあられ
空気中の水蒸気が氷になって落ちてくるものは、一般に冬に降るものを「あられ」、夏に降るものを「ひょう」ということが多い。しかし実際には、季節でなく大きさによって定義されている。 あられは直径が2~5ミリ。多くは白色不透明で、ひょうより柔らかい。 ひょうは直径が5~50ミリ。雷を伴うことが多く、農産物や人畜に被害を与えることもある。 ひょうもあられも、積乱雲の中でできる。積乱雲の中は強い上昇気流があるので、上空の氷の粒のスピードが早くなったり遅くなったりすることで、落ちたり持ち上がったりする。これを繰り返すうちに、氷の粒同士がくっついて大きくなったものがひょうである。一方あられのでき方には二通りある。単にひょうの小さいものと、溶けかかった雪が落ちてくる間に再び凍って固まった雪あられだ。 両者の区別は季節に関係なく直径で決まるから、冬のひょう、夏のあられも存在する。冬のひょうは本州の日本海側に多い。日本海が空気より温かいので上昇気流が起こり、北陸では雷おこしと呼ばれる激しい雷が鳴ったときにひょうが降ることがある。夏のあられは、ひょうが溶けて小さくなったものだ。 また、みぞれは、雪が途中で溶けて雨まじりになったもの。冬の比較的気温が高いときに降る。


北極vs南極
「北極」と「南極」はどちらも氷の国であり、極寒の地というイメージだ。しかしじつは、北極と南極ではかなりの温度差がある。 結論からいえば、南極のほうが北極よりかなり寒い。平均気温を比べてみれば一目瞭然で、南極中心部の年平均気温がマイナス60度なのに対し、北極はマイナス30度程度。同じ極点なのに、この差はどこからくるのだろう。 その答えは、南極が大陸なのに対し、北極は海だからだ。大陸は熱しやすく冷めやすい。地表の日射が少なく、しかも温かい海からの熱を受けることも少なく、おまけに平均標高が約2300メートルと非常に高いのである。 それに比べ、海である北極は、水が温まりにくく冷めにくいという性質があるために、南極ほど冷え込まずにすんでいるわけだ。 しかも、北極の近くには、アメリカからヨーロッパへとつづく大西洋をメキシコ湾流という暖流が流れている。この影響も、北極が南極より暖かい理由のひとつである。

ま~や行
ミネラルウォーターvsナチュラルウォーター
最近では飲料水を買って飲む人が多いが、その水がどんなものなのか理解しているだろうか?ボトルに詰められている水はすべてがミネラルウォーターだと思ったら大間違いである。 確かにヨーロッパ産の製品の中には、ミネラルが豊富で、まったく加工されていない水も多い。しかし中にはミネラル量が水道水と大して変わらない水もある。 販売されているボトルの飲料水には、大きく分けて「ミネラルウォーター」と「ナチュラルウォーター」がある。 1990年に農林省(当時)が定めたガイドラインによると、ナチュラルウォーターとは、特定の水源から採取した地下水で、漉過・沈殿・加熱殺菌に限り処理してあるもの。つまりミネラルの量はまったく関係ない。 それに比べてミネラルウォーターとは、ナチュラルウォーターを原料としてミネラル分を調整するなどしたものだが、ここでもミネラル分の濃度や量については規制がない。 天然の水で、しかもミネラルが含まれているものはナチュラルミネラルウォーターと呼ばれており、エビアンなどがこれにあたる。 このほかに、ミネラルウォーターと呼ばれるものの中には単に飲用に適した水を詰めただけのボトルドウォーターと呼ばれるものもある。


ムツゴロウvsトビハゼ
汽水域に生息し、干潟ができるとドロの中を、ヨタヨタ歩くように泳いだり、ときにピョンとはねたりするのが、「トビハゼ」だ。岩や木の上にも這い上がる。 これとそっくりなのが「ムツゴロウ」。トビハゼと同じくハゼ科に属するものの、九州の有明海と八代海だけに生息している。ムツゴロウの体長は16~20センチあって、トビハゼの8~10センチよりやや大きい。 また、トビハゼが甲殻類やゴカイなど肉食なのに対し、ムツゴロウは干潟の泥の表面に生える珪藻を好む。 どちらも第一背ビレと第二背ビレを持ち、怒ったときや求愛行動でこの背ピレを立てる。この背ビレに青い斑点があるのがムツゴロウ。 干潟でも生息できるのは、エラと皮膚の両方で呼吸できるからだ。日本では九州の一部だけと珍しいが、朝鮮半島や中国沿岸、台湾にも分布している。



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